半分ミルク 半分コーヒー【♂2】


・望夢(のぞむ)♂

偽物の友情を護ろうとした優しい男の子

・遥(はるか)♂

永遠の幸せが欲しかった欲張りな男の子


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遥「望夢ー!ごめん!お待たせ!」


望夢「あっ、来た!遅いぞ!遥!」


遥「はは、ごめんごめん」


望夢「学校遅れるぞ?」


遥「大丈夫だって。この時間なら多分ギリギリセーフ!」


望夢「はぁ…遥はいっつもそうやって…」


遥「(被せて)はいはい。ほら、早く行かないと遅れるぞー!」


望夢「なっ、こっちのセリフなんだけど?後でいつもの奢れよなー!」


遥「はは、分かってますー!」


望夢:

俺と遥との関係は、幼なじみ。

家が近くて、保育園が同じで、小学校も、中学校も、高校も同じ。

昔からなんだかんだ仲が良くて、一緒にバカやって、何でも話し合える親友同士。…なんて、そう思っているのは遥だけ…。


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遥「いやー、ほんとギリギリだったな」


望夢「だから、いつも言ってるだろ」


遥「あと2回遅刻で指導室」


望夢「ったく、いい加減にしろよな?」


遥「んー、なんていうか、さ。最近どうも眠れないんだよな」


望夢「どうせゲームばっかりしてるからじゃねーの?」


遥「んー…まあ、それもあるけどさ」


望夢「…それもあるけど?」


遥「…ま、大したことないって」


望夢「何だよそれ」


遥「あ、そうだそんなことより・・・望夢、はいこれ。朝のお詫び」


望夢「お、気が利くな」


遥「ほんと好きだよな、カフェラテ。俺はあんまり好きじゃないから」


望夢「遥はミルクたっぷりじゃないと飲めないおこちゃまだからな」


遥「っ、うるさいな!」


望夢「でも、事実だろ?」


遥「それはまあ、そうだけど・・・」


望夢「ほら、やっぱりおこちゃまだ」


遥「っ!今のは違うって!飲めないのは事実だけど!おこちゃまじゃないからな!」


望夢「ふっ、はいはい、そうだよなー・・・おっと、もうこんな時間か。さてと、急がないとそろそろ授業始まるぞー?」


遥「あっ、ちょっと!人の話聞けって!望夢ー!!」


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望夢:

遥の親は、いわゆる毒親と言うやつだ。周りからあんまり良い評判を聞かなかったし、何より遥は家出の常習犯だったから、なんとなくは気付いていた。

そんな日々が続く中で、俺が違和感に気づいたのは多分あの時だ…。


望夢「おーい!遥?遥ー!どこだー?」


遥「……」


望夢「遥?…あ、見つけた。メール見たぞ。どうしたんだ?」


遥「望夢…」


望夢「ったく、そんなとこ隠れて。もしかして、親と喧嘩した?」


遥「あ…うん。まあ…そんな感じ」


望夢「そっか。大丈夫だって。ほら、出てこいよ。話聞くから」


遥「…嫌だ。今は顔見ないで…」


望夢「はあ?何言ってんだ。呼び出したのは遥だろ?」


遥「嫌だって言ってるだろ!」


望夢「っ…」


望夢:

後に遥から聞いた話を俺は正直あまり覚えていない。親に新しい彼氏が出来たとか、彼氏と喧嘩する度に乱暴が増えたとか、確かそんな話だった気がする。

目の前で親友が話しているのに、そんなことがどうでもよくなるくらいに遥の泣き顔が綺麗で…呑まれちまったんだ。


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遥「…なあ、望夢」


望夢「んー?」


遥「望夢ってさ、その、好きな奴とか…いる?」


望夢「(カフェラテを吹きそうになって)っ…!何だよいきなり」


遥「いや、最近色んな奴が彼女出来たらしくってさ。ほら、俺らってなんやかんや恋愛話なんてしたことなかっただろ?だから、どうなのかなって」


望夢「どうって言われても…そういう遥はどうなんだよ?お前、モテるだろ?」


遥「えっ、俺?俺は別に、モテるとかそんな…」


望夢「んなこと言って。この前だって告白されてただろ?」


遥「あ、あれは…」


望夢「気になる奴とか、いねぇの?」


遥「俺は…まあ、その…」


望夢「何よ」


遥「別にっ、いないよ」


望夢:

僅かに上擦った声。知ってる。遥が何かを誤魔化す時の癖。…ムカつく。

俺も俺だ。自分で言ったくせに。

頭の奥がピリッとして、胸の奥がザワつく感覚に襲われた。


望夢「…ふーん」


遥「ていうか!俺が聞いてたのに、誤魔化すのズルくない?」


望夢「別に誤魔化してなんかねぇし」


遥華 「じゃあ、望夢はどうなんだよ」


望夢「俺は…まあ、一応…な」


遥「へっ?!いるの?!誰?!」


望夢「誰って、それは…内緒だろ」


遥「えー、どうして?気になるだろ!」


望夢「俺は、あんまり恋愛の話とか好きじゃないの!誰が誰を好きとか、誰が誰と付き合ったとか、そんなのどうでもよくないか?なんかそれって、野次馬みたいじゃねぇか」


遥「…まあ、確かにそうだよな。なんか、ごめん」


望夢「……」


遥「なあ、怒ってるか?」


望夢「あ、いや全然。怒ってるとかそんなんじゃねぇけど」


遥「…そっか、ならよかった」


望夢:

半分は本音、半分は嘘。よくもまあこんなにも冷静に話せたもんだ。

でも…少しくらい、意地悪なことしたっていいじゃねぇか。自分の口から出た言葉なのに、チクチクと刺さる。…痛ぇ。

なあ、遥。遥の好きな奴って、誰なんだよ?


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遥:

望夢との関係がギクシャクし出したと感じたのは、中学に入学してから暫くの頃だった。

お互い慣れない学校生活に精一杯だったのもあったけど、明確に違和感を感じたのは多分あの日、公園に望夢を呼び出した日からだ…。


俺の母さんは昔から俺にあんまり関心がなくて、きっとあまり良くないタイプの家庭なんだって、何となく分かってた。

そんな日々が続く中で、母さんに彼氏が出来た。それと共に、母さんが急に俺に優しくなった。

母さんの彼氏は、ろくでもない男で、金使いが荒くて、ギャンブルだってしてたし、借金もあるみたいだった。

でも、俺には関係ない。母さんが優しくしてくれた。それだけで幸せだったから。


でも、そんな僅かな幸せが長く続くことなんてないことは俺にも分かりきっていて…。苦しかったんだ。でも、そんな時望夢の顔が頭をよぎった。

なあ、望夢。巻き込んでごめんな。

俺さ、多分、本当は母さんなんてどうでもよかったんだ。

あの日話したことは、半分本音で半分嘘。

だって、望夢は俺にずっと優しくしてくれただろ?

俺さ、ずっと望夢に救われてたんだ。


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望夢「遥。帰ろーぜ?」


遥「えっ、あ、うん!」


望夢「何?なんかぼーっとしてた?」


遥「はは、朝にも言っただろ?最近寝不足だって」


望夢「…なあ、もしかして何か悩みとかあるか?よかったら話聞くけど…」


遥華 「ううん!何にも!そんなことよりさ、駅前に美味しいクレープ屋できたの知ってる?今日寄ってかない?」


望夢「あー、なんか聞いたことある。美味いらしいな。よし、今日予定ないし行くか!……って、あれ?佐藤さん、どうかした?何か用事?…あー、そっか。もしかして、遥に用事?」


遥「え、俺?」


望夢「行ってきたら?俺待ってるから」


遥「でも…」


望夢「いいから」


遥「…じゃあ、ちょっと待っててくれる?」


望夢「おう、行ってらっしゃい」


望夢:

行ってらっしゃい。なんて言いたくねえ。

遥がもしYESと言ったら?そればかりが頭をよぎる。

でも、遥にとって俺はただの親友でしかないから…。

遥がそうしたいのなら、俺は…。


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望夢「遥、遅いな…」


遥「望夢、待たせた!ごめんな。遅くなって」


望夢「遥!っ…!!どうしたんだよ、その顔!」


遥華 「はは、まあ、ちょっとな」


望夢「ちょっとって、何があったんだよ」


遥「…罰ゲーム、だって」


望夢「…は?」


遥華「山本くんとか三浦くんとかがいるグループあるでしょ?そのグループが佐藤さんに俺の事呼んでこいって。それで、なんか、囲まれちゃって…」


望夢「はあ?何だよそれ!」


遥「佐藤さんは何も悪くないから。あのグループ、俺の事気に入らないみたいで、前からちょっと目つけられてたっぽい」


望夢「悪くないって、加担した時点で同罪だろ!」


遥「ううん。佐藤さん脅されたんだよ。すごく怯えてたし、俺まで怒ったら可哀想だよ。それにほら、大したことないからさ!」


望夢「俺が怒るっての!…はあ、たく、もう。ほら、顔、こっち向けろ」


遥「ちょ、痛いって…」


望夢「いいから!」


遥「……」


望夢「……」


遥「望夢って、やっぱ優しいよな」


望夢「こんな時に何言ってんだよ」


遥「…そういうところ、ほんと好き」


望夢「っ…たく、そんなこと言ってる場合じゃないだろ?」


遥「…なあ、望夢」


望夢「ん?」


遥「望夢って俺の事好きだろ?」


望夢「…へ?」


遥「分かってる。最近の望夢、俺の事でよくイライラしてた」


望夢「そんな事っ…」


遥「気づかないと思ってたの?望夢さ、イライラした時よく目が泳ぐの。付き合い長いんだから分かるって。…でも、親友のフリしてくれてたんだよな」


望夢「っ…ああ、そうだよ。好きだ。ずっと好きだった。でも、遥は違うんだろ?」


遥「そんなことない。ほら。…俺の胸、凄いドキドキしてる」


望夢「なっ…それは…」


遥「好きだから緊張するんだよ。最近はずっとそう。ずっと、望夢のことばっか考えてた」


望夢「…だから、最近調子悪かったのかよ」


遥「…はは、まあ、そんなところ。…でも俺、欲張りだから。全部が欲しかったんだ。失いたくなかった。

母さんもさ、最初は凄く優しかったんだ。あんなに怒る人じゃなかった。

だから怖かったんだ。望夢に気持ち伝えたら、もしかしたら望夢もいつか変わっちゃうんじゃないか…って。

でもさ、望夢言ってくれただろ?好きな奴がいるって。あれって俺の事だろ?」


望夢「俺の事って…あれは!遥が好きな奴いそうな雰囲気出すから、だからっ!」


遥「でも、嬉しかった。だから、告白を受けるのはこれで最後にしようって。まあ、結果的にはこうなっちゃったんだけど」


望夢「お前…俺にカマかけた訳?」


遥「はは、まあ」


望夢「…はぁ…。お前ってほんと馬鹿」


遥「分かってる。でも、望夢だって同じでだろ?」


望夢「何が?」


遥「恋愛話なんて興味無いって。ほんとは死ぬほど気になってたくせに」


望夢「っ…!あれは…」


遥「っ…ふふ」


望夢「っ、笑うなよ!ったく…。俺の今までの我慢返せよ」


遥「はは、ごめんって。後でいつもの奢るからさ」


望夢「お前っていっつもそう。ほんと腹立つ。もう許さねぇ」


遥「そこは許すって言ってよ」


望夢「…やだ」


遥華「……」


望夢「なあ、ほんとに俺でいいのか?」


遥「何言ってんの。望夢がいいの」


望夢「男同士だぞ?」


遥「だから何?」


望夢「結婚とか出来ないぞ?」


遥「えー、俺達まだ高校生だろ?早くない?」


望夢「それはそうだけど…」


遥「…なあ、俺と永遠誓ってくれるの?」


望夢「…誓う。結婚なんてできなくても」


遥「ほんとに?」


望夢「何年お前だけを見てきたと思ってるんだよ」


遥「ふふ、確かに」


望夢「遥は?」


遥「…俺も、誓う」


望夢「ほんとか?」


遥「俺だって、何年も望夢だけを見てきたんだからな」


望夢「そうか。・・・ありがとうな望夢」


遥「へへ。…あ、そうだ。じゃあさ、卒業したら海外飛んじゃう?」


望夢「は?何言ってんんだよいきなり」


遥「だってほら、海外なら同性でも結婚できるって言うしさ!」


望夢「…はは、ったく、ほんと馬鹿」


(2人笑い合う)



(END)

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