個星の夜(koseinoyoru)【全性別2】
・店員・・・♂♀
・客・・・♂♀
※一人称、二人称の変換は構いません。
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店員「いらっしゃいませ。おひとり様ですか?…あら?」
客「どうも、こんにちは。また来ちゃいました」
店員「かしこまりました。いつもの席ですよね。」
客「あら、覚えていてくださっているんですね。何だか嬉しいです。ありがとうございます」
店員「もちろんですよ。閉店間際に来られるお客様はそう居ませんから」
客「そうなんですね。商品名をお客が決めるだなんて、なんだかとても変わったお店ですからつい気になって」
店員「それでは、今日のご注文は如何なさいますか?」
客「...それが、実はとても大切な注文がありまして...」
店員「とても大切な......。あ、もしかしてサプライか何かですか?」
客「あ、えっと、そういう訳では...」
店員「?そういう訳ではなく?」
客「...あの、私をこの店で働かせて貰えませんか?」
店員「...?」
客「何度も通り掛かっていたのはそれが理由なんです。こんな素敵なカフェで私も働けたらなぁ...て。だって素敵じゃないですか、大好きな紅茶を自分でブレンドできる上に、お店の名前が『個星の夜』だなんて」
店員「ふふ、そうですか?ありがとうございます」
客「はい、つい。私、紅茶大好きなんで」
店員「あら、それは嬉しいです。でもごめんなさい。うちでは求人はやっていないの」
客「それはもちろん、承知の上です。マスターが淹れてこその紅茶ですから。でも、どうしてもここで働きたいんです!雑用でも、何でもいいんで!そこをなんとか!!」
店員「...んー...そうねぇ。それじゃあ面接だけでも」
客「ほんとうですか?!ありがとうございます」
店員「まずは、お名前、ご年齢は?」
客「マユです。年齢は21です」
店員「ご出身は?」
客「マルベリートですけど...」
店員「あら!」
客「ど、どうかしましたか?」
店員「あら、ごめんなさいね。私もマルベリート出身で、つい。あの大きな塔のあるところ?」
客「いえ、私の住んでいるところは森の方でとて小さな村なんです」
店員「ああ、あの小さなパン屋さんがある所ね。私もよく行くわ」
客「そうなんですね!実はあそこ、私の実家で」
店員「そうなの?!あそこのパン屋とっても美味しいの!」
客「まあ、なんだか嬉しくなっちゃう。またお母様に伝えておきますわ」
店員「...」
客「...」
店員「こほん、と、すみません。話が逸れてしまいましたね」
客「あぁ!いえいえ!私こそすみません...」
店員「それでは本題なんすが」
客「...」
店員「あなたはこの店のどこが気に入ったのでしょう?」
客「それはもう!やっぱりこの店の外見ですよ!まるでプリンセスのお話から出てくるような木造のおうち、そこから漂う紅茶の香り。虜にならないわけが無いです!」
店員「そうなんですか。あの外装実は私が考えたんです。
客「そうなんですか!道理で素敵で!」
店員「いえいえそんな。もちろん、特別こだわってはいますけど」
客「店員さんの気持ちが籠って見えます!」
店員「ふふ、ありがとうございます。ちなみに今まで飲んだ中で一番好きな紅茶の種類はありすか?」
客「(少しずつ早口)やはりミッドナイトですかね。真っ黒なカップの上に星々が浮かんだ...私夜空がとても大好きなんです。宝石が鏤められたような、まるで目の前に広がるような。あとは何よりも味とコク!夜を表現するようなビターな味に、月夜をイメージするような優しいコク。あれはミルクと、ほんの少しフルーツが入っていますね。おそらくバナナ。あの甘くて優しいフルーティーさが」
店員「ありきたり(ボソッ)」
客「え」
店員「あ、いえ、喋ってばかりもなんですし、もし良ければこれをこの店のコンセプトを分かってもらえていれば、きっと伝わると思うので。名前は『さようならの夜』」
客「さようならの夜.....え?」
店員「はい、さようならの夜です」
客「えっと...すみません。私何か気に触ることしましたか?」
店員「『個星の夜』つまり、それぞれの夜を見せて欲しいんです。なのにあなたは、『やはり』だの『やっぱり』だの。それでは在り来りな夜じゃないですか」
客「すみません」
店員「あ、いえ、謝ってほしい訳ではただ...不採用です。元から取る気もありませんでしたし。毎日来る常連だったので、例外です」
客「...」
店員「でも、嬉しかったです。この店の意図を少しでも理解くださっていて。だから...もう少し常連になってから店員になっていただけませんか?」
客「っ!ありがとうございます!」
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